- ロゼレム効くかな?
- リスパダール飲ませてるけど聞いてるのかな?
- 薬のませてもいいの?
発達障害の子どもに薬は必要なのでしょうか?
自閉症児2人を育てる私の答えは「子どもによる」です。
私の娘は4歳から薬を飲用し続けていて、現在12歳です。「薬は辞めた方がいい」「癖になるよ」と、多方面からアドバイスを貰いましたが、薬を辞めようと思ったことは1度もありません。※ちなみに、自閉症の息子は薬は飲んでいません。
今回の記事は、娘の精神薬飲用の8年間の体験記。あくまで、母の主観です。
発達障害(自閉症)の子供に薬は必要?
母と娘の体験記をお伝えする前に、医師から聞いてきた「発達障害の子への薬物療法について」を解説します。
発達障害の子どもたちへの、支援アプローチ
まず、発達障害の子ども達に対する「支援アプローチ」について解説します。
障害を抱える子たちが、社会で生きていくために用いられる支援方法は主に以下の3つ。
- 療育(治療と教育を掛け合わせたネーミング)
- 生活環境の調整
- 薬物療法
【療育・生活環境の調整・薬物療法の解説】
療育 | 「士」がつくプロの方々が(作業療法士や言語療法士など)、行動や言葉をその子にあった方法で適切に指導 |
生活環境の調整 | 過敏性や不安が強い部分をその子に必要なものを物理的に補って配慮・支援 ※例えばですが、娘は聴覚過敏が強いので、専用のイヤーマフを活用していることも多い |
薬物療法 | てんかん発作がある場合にはもちろんのこと、睡眠障害や多動性、攻撃性などが、日常生活に支障を与える場合にも、薬が用いられる |
薬物療法の目的について
ここでは「薬物療法」について、以下の2つの視点で紹介します。
- 医師の医療的な専門知識を持った視点
- 母として一緒に暮らす上での視点
医師に薬物治療の目的を聞くと「やっぱり、落ち着いた方がいいですし、夜は寝た方がいい」と、口を揃えて帰ってきます。確かに。
実際に薬を飲ませ一緒に暮らす母として、薬物治療に対して8年かかった今だから思うことは「合う薬が見つかり始めていて、本当に良かった」ということです。詳しくは後述しています。
薬物治療を用いられるケースについて
発達障害であれば、必ず必要なわけではありません。
主に、以下のようなケースについて「薬物治療」を用いられます。
- 障害によって、本人が自分をコントロールできないほど辛い状況
- 日常生活・家庭生活・集団生活が困難な場合
- 障害による二次障害として、鬱や不安感などが出てしまう場合
副作用について
我が子への薬を躊躇する親御さんの中には「副作用」を懸念される方も多いものです。
どのような薬にも「主作用」と「副作用」があります。風邪薬を例にあげましょう。
主作用 | 風邪の諸症状の緩和
|
副作用 |
|
こうした、本来の症状を抑える働きを「主作用」、それ以外の働きを「副作用」といいます。
副作用は薬によって違いますし、薬を服用する人の体質によっても違います。副作用が出る人もいれば出ない人もいます。しかし、保険診療で使用を認められている薬は、重い副作用が出ないとされています。
ベテランの医師といえども、薬を飲用しないことには、「主作用の効果があるかどうか」「副作用がでるのかどうか」も分かりません。主治医と相談しながら少量から薬を開始することが多いのが、薬物療法の特徴です。
8年間「精神薬を飲む自閉症の娘」にみてきたもの
娘は、4歳という比較的早い段階での薬物療法の開始でした。薬を飲ませることに不安がなかったといえば嘘になります。むしろ、不安だらけでした。しかし、それより「毎日の苦しそうな姿」を見ている方がもっとツラく、藁にも縋る(わらにもすがる)気持ちで「薬物療法」をスタートしました。
私と同じく、我が子の投薬に悩む方は多いと思います。多くの中のひとつの事例として、私が見てきた8年間の薬物療法についてお話します。
薬物治療のキッカケ
娘の薬物治療がスタートしたキッカケは、セラピストからの提案です。
当時4歳だった娘が通っていた、療育と小児デイサービスは同じ病院内にありました。OT・ST(作業療法士と言語療法士)と、小児デイサービスの保育士が支援する中で「不安が強すぎる」「落ち着かないことが多すぎる」という話になり、母である私に「薬物による治療」を提案されました。
娘が落ち着かないのは、日々の暮らしの中で親として誰より実感していました。
- 衝動性の強い娘は直ぐに道に飛び出す
- 不安が強く、ちょっとしたことでパニックになる
- パニックをキッカケに人を噛み、自分までも痛めつけてしまう
- 昼間の強い不安から夜にフラッシュバックが起こる
- 連日の睡眠障害と夜中のパニック
今思えば、きっと幼いながらに賢い彼女は分かっていたはずです。
- 車にひかれたらどうなるのか
- 噛みつくことはよくないこと
- 自分を痛めつけると母が泣くこと
- 寝なければ体が疲れている
そんなことは十分承知した上で、パニックになると自分の理性ではどうにも抑えることができず、問題行動に出てしまっていたのでしょう。
親としても、家族としても毎日苦しい。
娘自身も、毎日苦しい。
これでは、いつか弟も含め潰れてしまう。
「薬に期待しよう」
「医師を信じよう」
そう腹を括りつつ、心のどこかでは「まだ4歳の娘なのに」と、精神薬を飲ませることへの強い不安と親としての強い葛藤もありました。
結果として、娘の興奮や不安感を落ち着けてくれる「リスペリドン(リスパダール)」と「エビリファイ」を、4歳から飲むことになりました。
主治医は何度も変わったし、薬も何度も変わった
4歳から11歳まで、ありとあらゆる薬を飲んできました。
主治医も(転勤等で)何度もかわりましたが、きちんと申し送り・引継ぎをしてくれていて状況も過去の経歴や飲用歴も知ってくれていました。娘は、病院での待ち時間が苦しくパニックに繋がることが多いために、いつも私がひとりで受診をし医師に近況を伝え、薬を処方してもらっています。
医師は知識はあるけれど、家での娘の過ごしを知らない。支援者や教職員は集団の中での娘は知っているけれど、家での娘を知らない。さらには利用しているデイサービスも、人数制限的に毎日同じところが利用できるわけではないから、場所や人によって支援方法も違う。
私は受診の度に、知っている状況と娘の経過を事細かに伝えました。あらゆる薬でアプローチしてもらいましたが、娘の衝動性や睡眠障害・不安感の強さが緩和されることはありませんでした。
「ねえ、他害も自傷も、親子での睡眠不足も一生続くの?」と、ずっと自分に自問自答していたのです。
成長と共に「できること」は増えたけど…本人の苦しみが減るわけじゃない
年齢が上がると共に、娘が「できること」は増えました。でも、本人の苦しみや不安が減るわけじゃないから、やはり問題行動は続く。
家のものを壊され、食事を投げられ、噛みつかれ、自分を痛めつけ、夜中に突然叩かれる。こんな生活に対し、「どうしてほしいの?」と思っていた私とは別に、「どうしてわかってくれないの」と娘は思っていたかもしれません。
いや、違うな。
「ママ、助けて」と思っていたはず。
その後、息子を含め家庭内での大きなトラブルがあり、娘はレスパイト入院することになりました。そのときの様子は以下記事をご覧ください。
薬が満ち足りたと感じたキッカケ
入院を通じて、医師が1日を通して娘を見ることになり、薬が大幅に変わりました。
そのことがキッカケなのか、入院という大きな起点をキッカケに彼女の中で何かが変わったのか…または両方か。何がキッカケかは分かりませんが、入院と薬物の大幅な変更を境に、娘が落ち着いている時間が増えました。衝動性も減り、パニックも減り、一晩通して眠れる日も増えました。
また、私にくっついてくることも増えました。落ち着いている娘を見ていると、「本当はこんな女の子だったんだね」「知らなくてゴメンね」と思います。
私が薬に思うこと
発達障害は生まれ持った特性のひとつなので、薬で発達障害が消失することはありません。ただ、薬があえば障害によって引き起こされる、問題行動は抑えられます。
アレルギーの方が薬を飲むことで、痒みや鼻水が一時的に治まるのと同じです。
発達障害の方が、自分に合った薬を見つけることで
- 落ち着いて座ることができたり
- 他害自傷を抑えることができたり
- 視覚過敏・聴覚過敏を軽減したり
- 睡眠をまとめてとることができたり
他にも、さまざまなメリットがあるはずです。
繰り返す他害自傷で自信をなくしたり、わざとではない失敗で叱られることも減ります。不安でいっぱいだった毎日が、少しでも穏やかにすることができます。
親御さんの中には、「薬が効かない」とか「飲ませても何もかわらない」という方を見かけますが、薬は障害を無かったことにしてくれる「おとぎ話に出てくるような、なにか」ではありません。
薬物治療にに期待するのならば、本人に見合う薬を探す努力と根気が必要です。そのためには、集団の中の我が子の話をよく聞いたり、家庭での困り感をよく見る必要もあるし、発達障害を抱える人に関わるみんなで考えていく必要があります。
薬の飲用によって、吐き気を催したり、だるそうになってしまうこともありました(前述した副反応)。でも、副反応はずっと続くケースは少ないですし、ずっと続くようであれば医師が薬を変えてくれます。
来年から(あと5ヶ月かな)娘は、障害者として「支援の中で生きていく力をつけるため」に事実上の自立をします。その前に、少しでも本来の娘っぽいところを見ることができて本当によかった。
だから、私は薬にありがとうと思っています。
自閉症育児で何より大切なのは、精神の障害によって「心の成長」「本来の優しさ・素直さ・温もり」を、潰さないように育ててあげることではないかと、私は考えます。
言い換えれば「自己肯定感を高める」ための何かより、「自己肯定感を潰さない」周囲の配慮だって、子どもの成長には物凄く大切なことのひとつだと思っています。
今日は、ここまで。