【親視点】精神科病棟に娘が入院して、みえてきたこと

2021年4月、娘は小学校6年生に進級しました。

 

発語もありませんし、パニックや自傷他害の多い娘です。しかし、出生時より無数の不安を多くの人に理解されず数々の難を乗り越えてきた彼女は、とても賢いなと思うことが多々あります。

 

多くをわかっているからこそ「パニックになってしまった自分に後悔」する姿も見受けられます。そんな彼女が本年度3回の精神科病院への入退院を繰り返し、親の私が考える医療の大変さにも、なんとなくだけど気付きましたのでお伝えしましょう。

精神科病棟に娘が入院して、みえてきたこと

娘が何度か、精神科病棟に入退院を繰り返して見えてきたのは、圧倒的に看護師不足ということ。

 

人手不足など、誰しも分かっていることだけど「人手不足」で片づけられるものでもない気がする。

 

そんなことに気付いたポイントは、以下の2つ。

  1. なぜ、娘だけが鍵付きの部屋に
  2. なぜ、娘だけお風呂に入れて貰えないのか

詳しく解説しましょう。

なぜ、娘だけが鍵付きの部屋に

娘の入院中に私は、2~3日に一度、娘の洗濯物を取りに(届けに)病院へ足を運びます。

 

病棟の入り口は閉ざされていますが、ガラス越しに中は少し覗けます。他の入院中の子は院内を自由に院内を歩いているし、ある程度の自由が許されているように見える。

 

娘は、鍵付きの部屋で一日中すごし、1日30分ほど看護師と部屋の外で過ごすことを許されているそうです。

 

また、面会に来たよそのご家族の方々は病棟の中に通される。我が家は、中には通されない。(面会することで娘が自宅に帰りたくなったり不安定になったりすることから面会はなしでした)

 

寂しいですよね。
なぜ、我が家だけ…娘だけ…。

なぜ、娘はお風呂に入れて貰えないのか

ある日の月曜日、洗濯物を届けにいくと「今日は洗濯物がありません」と。

 

おなじ週の水曜日に洗濯物を取りに行くと「今日も洗濯物はありません」と。

 

看護師へ質問しました。
「お風呂は入れなくても、清拭は?」
「着替えは?」

 

帰ってきたのは「私は担当看護師ではないのでわかりません」と。

 

次に、金曜日に洗濯物を取りに行くと、また「洗濯物はありません」と。同じ質問を再度投げかけると「お風呂は入れていないけれど、清拭はしているはず。その際、下着も替えているはずですが今のところ無いようです」と。また、担当看護師ではないから詳しくは分からないとのこと。

 

次は日曜日に足を運びましたが、また洗濯物はありませんでした。士長が出てこられたので話を聞いてみると「すいません」と少し不機嫌そう。だから、その後は聞くのをためらったけれど、やっぱり気になるので同じ質問をもう一度してみました。

 

「お風呂は入れなくても、清拭は?」
「着替えは?」

 

解答は「男性看護師のこともあるし、清拭できない状況のときもあります」と。

 

謝って欲しいのではなく「詳しく状況を知りたかっただけなのにな」と、悲しくなったけど「理由があるはずだ」と、帰宅後によく考えてみました。

親の主張は必要だけど、切り取り方によっては精神障害者家族にとってもマイナスを招く

「なぜ、娘だけ鍵付きの部屋に?」
「なぜ、他の子は自由に歩いているの?」
「なぜ、お風呂にも入れて貰えないの?」
「お風呂に入れないのなら、下着は替えないの?」

 

あまりにも悲しすぎて、親の主張として苦情を入れることも可能だったけれど考えて辞めた。

 

娘が精神科病棟でパニックになってしまえば、(現在自由に院内を歩けている)他の精神障害を抱える子にも大きな影響を与える。慢性人手不足のそんな中、娘自身を自傷他害から守るためには、結果として個室で拘束しておく方法のみだったのだと思う。

 

娘を育てる中で分かっているのは、自閉症の子のパニックひとりを抑えるには大人が複数人は必要。過去にも、暴れすぎて怪我だけじゃ済まないと思うことも多々あった。

 

最低限の看護師の人数で他の精神障害者を見ながら娘を守るためには、個室(そして、ときどきの風呂・清拭・着替えもできない状況)が最善の策だったのだと思う。

 

ここで、私が「酷い」と声をあげて、その声が社会に拾われてしまったら、ただでさえ狭き門の福祉や医療利用の制度がもっと利用できなくなる。

 

***

 

たとえば「娘にも自由を」と私が声をあげて、その声に賛成する声が多く社会問題になってしまえば、病院側は人手不足のなか、娘を自由に院内を歩かせるしかなくなる。

 

今度は、娘が院内をウロウロしたことで、窓ガラスを割って飛び降りたりでもすれば私は病院を訴える。結果として病院が負けてしまえば、それはそれで社会問題になる。

 

自由にしても、拘束しても社会問題になる。じゃあ、どうすればいいの?ってなると思った。

 

***

 

支援者の人手が少ないなかで、保護者が声をあげることは今より制度の門を更に狭くすることにも繋がる。結果として自分で自分の首を絞めることになるのだろうなと思った。

 

おかしいことだし、虚しいことだけど、これが現実。悲しいよね、本当に。

 

医療だけじゃなく、福祉の現場も同じなのかな。おそらく、教育や保育も。

 

障害者が苦しむことが、家族の苦しみに繋がり、それが慢性的な人員不足の支援側の苦しみにも繋がる。

 

***

 

私には、風邪ひいた人が「ついでに、肩も痛いからついでに湿布や痛み止めも下さい」といって、その薬代が無料になることよりも、本当に困っている人の制度が少々有料であったとしても利用できることのために税金が使われて欲しいと思う。

 

虚しいよね。ついでに湿布薬を貰える人がいる医療の仕組みの中、毎日生きるかどうかで苦しんでいる人が声をあげられないなんて。

まとめ:【親視点】精神科病棟に娘が入院して、みえてきたこと

娘の入院や福祉制度の利用について。願い出る度に感じるのは「利用できない」ということ。

 

そこには人手不足の壁が大きく立ちはだかってるんだよね。

 

人手不足の原因には「働き手世代が少ない」ってのもあるけど、待遇と仕事量の問題もあるんじゃないかなって思う。

 

しがないひとり親の、勝手な予想だけど。
制度作る人は、一度現場をみるべきだよね。

 

今日は、ここまで。

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