【特本コラム#35】昔に戻りたがる人達について

暮らし方や子育て、教育とさまざまなシーンにおいて「昔はよかったな」という人がいます。

 

私はちっとも、そんなこと思いません。もちろん、エネルギッシュな若かりし自分を「よかったな」と振り返ることはあるけれど、昔の時代をよかったなと思うことはありません。

 

「昔はよかったな」という人達に共通するのは、現在の暮らしに困ってないからでしょう。

 

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昭和の時代にひとり親をすることは、現代にひとり親をするよりもツラい状況だったはずです。「バツイチ」という言葉の「バツ」の部分も、多くは女性側に向けた「失敗」という意味が込められていたのではないでしょうか。その名残が、現代にも爪痕を残していると感じるときもあります。

 

障害児育児や障害者(児)当事者においても、ひと昔前と比べるとかなり良くなっています。まだまだ課題は多く残されてはいるものの、特殊学級から特別支援学級へと変化し、手探りであるもインクルーシブ教育や合理的配慮なども取り入れられ理解が進み始めているわけだし。

 

また、女性が子育てをしながら働くことを諦めていた時代のことや、高い教育を受けることさえ認められなかった時代のことを考えると時代は快方へ開かれている。多くの社会問題が、よりよい方向へ向っています。

 

だけど、良い方向へむかっていることには気が付きにくいのです。なぜなら、社会課題は次から次へと生じるし、社会課題解決への歩みが遅々たるものだから、どうしても「現代は生きにくい」と感じてしまうもの。ですが、社会は確実にいい方向へ向かっていると私は考えます。

 

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「昔はよかったな」と考える人たちは、現代の暮らしにそれほど困ってはいないのでしょう。ある程度の確約された暮らしの中で生きているから、過去を振り返りたくなるのかもしれません。

 

私は、ひとり親と障害児育児を並行しており、結構ツラいときもあります。また、我が子達も同じだと考えます。支援がないと社会の中では暮らしていけないために、幼いながらに一般的な子ども達よりツラいことが多いのではないでしょうか。

 

そんな私たち家族にとって、昭和の支援制度を「よいもの」としてに戻られたらたまったものではありません。「昔はよかったな」と考える人の「昔」の部分は、今の社会の悪い側面にしか目が向いておらず、自分が経験した豊かで良い面を振り返って過去を目指そうとする発想です。

 

どの時代にも「いい側面」と「悪い側面」があります。

 

「悪い側面」は時代と共に切り開かれていますが、その裏で誰かが必死で切り開いてくれたことを忘れてはいけません。また「いい側面」というのは、その時代にとっての「いい側面」であり、人口推移や社会状況・景気などによって変化します。

 

「昔はよかったな」というのは、その時代に自分は何も困っていなかったというだけのこと。自分が一般的な暮らしを送ることができていた裏で、ツラい思いをして歯を食いしばっていた人達のことに気付けなかっただけなのかもしれません。

 

・障害者の選択肢が、今よりも少ない時代
・離婚した女性にとって、精神の豊かさまで追いつめられ時代
・女性の多くが、結婚のために多くを諦める必要があった時代

 

そんな時代を、今より良かったと思える人たちは「社会問題が少しずつ切り開かれていること」を今一度見つめ直した上で、本当に昔はよかったのかと考えてみてほしい。また、ここに留まることが「これから」に繋がるのかと。

 

昔の暮らし方や子育て・教育を懐かしむ考えは「過去に戻る表明」です。それでは「これからの社会」「これからの未来」「これからの時代」は、いつまでたってもやってきません。

 

次の時代に進むために大切なことは、前へ前へと進んでいくという覚悟。

 

当然のことながら、前に進むことは前例がないから失敗もする。10回挑戦したら9回は失敗でしょう。9回の失敗を見て「ほれ見たことか!」と、いっていては「次の時代」へは進まない。「なぜ、失敗したのだろう」と、9回の挑戦を検証し次の時代へと進んでいくことが、より多くの人達が豊かに暮すための「これから」を創り出すことだと、私は考えます。

 

子ども達が飛び出す社会は、多くの人に多くの選択肢が準備されていてほしいな。誰だって、いつ弱者になるか分からないのだから。

 

今日は、ここまで!

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