私は、ひとり親で障害児2人を育てています。
2009年生まれの「特別支援学校に通う娘」と2011年生まれの「特別支援学級に通う息子」、共に自閉症です。
来年度の春(2022年4月)より、娘の施設入所を医師に提案されていました。
近くの施設に空きがないから、100キロ先の施設入所となり転校も伴います。医師のいう通り「大人の中で生きる力をつけるために」という言葉を信じ、断腸の思いで入所を決め体験なども繰り返していましたが、支援者とのコミュニケーション不足や体制の不透明さから「入所させたくない」という思いも募って、私も心的に限界だった頃、神の救いのような出来事が起こりました。
「自宅近くの施設に空きが出て、そこに入所すれば娘の転校の必要もない」という急展開。その急展開は、児童相談所のお陰もあったと思います。
長くなりそうなので、時系列で解説しましょう。さらに、親として今回の騒動で感じた「自閉症の子の母子分離でたいせつなこと3つ」もお伝えします。
自閉症の娘の施設入所について:時系列で解説
自閉症の娘の施設入所について、時系列で解説しましょう。
2021年4月~6月:自閉症の娘が荒れはじめる~入院
小学校6年生になった春ごろから娘が荒れはじめました。
「荒れている」という言葉は私から見える視点なのかもしれません。本人だけではコントロールできない苦しみを抱えてしまい「問題行動」といわれる自傷他害行為、睡眠障害、家電製品を壊すなどが家庭で増えました。
私は母親ですが、人間です。どこまでも強い心で責任をもって娘を見守り続けるなんて無理なのです。私でもそうなのだから、10歳の弟にはもっと無理だったのでしょう。
娘の抱えている障害特性からくる苦しみが、本人だけの問題ではなく家族の問題へと大きく変化し始めました。
警察を呼んだり、児相に問い合わせたりした結果、医師の紹介で入院に至りました。
そのときの詳しい様子はこちらでも解説しています。
先日、自閉症児の娘が精神科病院に入院しました。 それまでに私が感じていたのは…。 「自閉症児と過ごす、週末が辛い」 「不甲斐ない自分は、子どもと共に消えてしまいたい」 枕に顔を押し当てて、[…]
2021年5月:退院~医師から「母子分離の提案」、そして受け入れる
入院後、医師から「もうお母さんひとりで育てるのは大変だから、大人の中で生きる力をつけませんか」と提案を受けました。
ただね、近くの宿舎に空きがないから100キロ先の施設への入所しか選択肢がなくて、そしたら転校…すぐには決めれませんよ!
先日、自閉症児の娘が精神科病院に入院しました。 娘が精神的におかしいから、入院を決めたわけではありません。娘が障害の特性によって苦しんでいて家族だけの手では助けてあげることが出来なかったからです。  […]
2021年7月:100キロ先の施設と特別支援学校へ、母・相談支援員・学校主事と訪問(見学)
何度も何度も考えた結果。
私はいつか今以上に老いて、先に死んでいく。だったら、娘に生きる力をつけさせるべきだという結論にたどりつき「100キロ先」の施設入所を覚悟。(来年度:中学部入部から)
で、7月に福祉の相談員と私と学校主事で、施設と学校の両方の下見&顔合わせに行きました。このとき、私は「入所は確実にできるんですね?」と聞いて、その後に必要になってくる暮らしのことなどを多々質問しました。
2021年8月:自閉症の娘が荒れはじめる~2回目の入院と退院
夏休み。
睡眠障害と自傷他害勃発が始まった娘…なぜ…。寝れない私と息子…そして家族全員が不安定になっていく様子に不安を覚え2度目のレスパイト入院を受け入れてもらいました。
娘の12歳のお誕生日も病院で迎えた私たちのようすは、こちらから。
私は自閉症児2人のひとり親をしています。 娘は特別支援学校の小学6年生、息子は特別支援学級の小学4年生。来春、娘は中学校1年生になると同時に、遠くの町の宿舎で暮らし転校もします。 医師の「[…]
2021年9月中旬:100キロ先の施設と特別支援学校へ、母・相談支援員・学校の担任と娘も体験
でね、2学期になり娘も始めて入所先の施設と新しい学校の中学部体験へ行きました。
かなり嫌だったことでしょう。
平日に、学校を休むという非日常。
知らない人ばかりの、新しい場所。
車で2時間の移動…。
彼女にとっては、苦痛以外なにものでもなかったと思います。
だからね、事前に連携を取りたかったし、申し送りも娘のあらゆるシーンを知っている多くの支援者にして欲しかった。それにね、新しい入所先の施設を体験している間は、私は離れていたわけだからフィードバックもほしかった。でも、誰からもなかった。聞いても、答えてくれる人もいなかった。
私がどんなに訴えても、実際に矢面に立って動いてくれる人って少ないんだよね。それがとても悲しかった。
体験を終えてしばらく時間が経った頃、相談員を通じて新しい入所先に「娘さんは、こちらとフィーリングが合えば入所を受け付けます」と言われた。
フィーリングが合えば?
2021年9月中旬:母が荒れはじめる「カームダウン、私」
「フィーリングだ!?」と思って悲しくなってきた。
この子は1人じゃできないことも多いし、他害も自傷もあるけれど、問題行動をする子じゃなくて(正しく申し送りして)環境を整えてあげれば、さまざまなことができる子なのに。
訴えても訴えても多くの支援者がひとまとまりになるのはとても難しくて、私も苦しくなってきました。
それにね、軽い気持ちで母子分離を決めたわけじゃないんだよね。決死の思いで…断腸の思いで決めたことなのに「フィーリング」という一言で「預かれない可能性」を示される気持ちは、さすがに苦しくなってしまった。
2021年10月:児童相談所の介入により、100キロ先の母子分離が8キロ先の母子分離へ変更
で…
私はなんだか心が閉ざしてきて、娘がどんなにパニックになろうとも、そのことに息子がどんなに反撃しようとも、家の中がぐちゃぐちゃでもどうでもよくなってきた。
なんだか、だれも我が家のことなんて分かってくれない気がして…私が声をあげても届かないし、誰かがリーダーとなって動いてくれるわけでもない。生きる気力がなくなってきた。
ネットで「死にたい」と検索したら厚生労働省のサイトがでてきた。そうだ、誰かと喋ったら気がまぎれるかも…と思いサイトをクリックして住所や家庭事情を入力する画面に到達。結局また、いつもの支援者に連絡が行って同じことの堂々巡りなんだなと思ったら入力する気も失せた。
次は「楽に死ぬ方法」で検索して、死ぬ勇気がないことに気付き、娘の精神薬の中から「眠くなる薬」を飲んで、私も寝た。その後2日間ほど1日中寝ていた。朝、学校に行く娘のことも見送らなかったけど、かってに送迎員さんが連れて行ってくれたのだと思う。ちゃんと帰ってきたし。
今まで以上に「助けて」と、声を張り上げて主張し、たとえ「助けたい」と思ってくれる人がいたとしても制度がないから現状は変わらない。逆に「モンスター」と捉える人だっているはず。世の中には、さまざまな人がいるのが世の常だから。
それでも最後にと思って児相に予約をとった。1ヶ月待ってやっと相談の日が来て、全ての事情を話した翌日…。
児相から、近場の施設の空きを確認して貰い…なぜか「空きがある」…なぜ…。こんなにも苦しい半年を過ごしたのになぜ…。でも、結果オーライ。来年度より母子分離生活はするけれど、引っ越しもなくなったわけだし。
でも、福祉がこのままでいいとは、とても思えないんだよね。
自閉症の子の母子分離に向けて、大切なこと3つ
本当に、2021年4月から今現在12月まで身体的にも心的にもツラかった。
医療・福祉・学校・親が足並みを揃えることが、どれだけ難しいことか目の当たりにしました。そして、当事者家族として疎外感を覚えることも数々とありました。
それでも、この生活の中で「私達家族は、大勢の人と制度に助けられながら生きているんだな」と、ありがたさを噛みしめる日々もありました。私たち家族が、がどれだけ生活弱者でどれだけ周囲に助けられているのかを、身を以て理解しました。
娘が自閉症でなかったら…
息子も自閉症でなかったら…
そして、私がひとり親でなかったら…
と思うこともありますが、同時にあらゆることを経験し学ばせてもらった機会に感謝する気持ちも感じています。
そんな中で、3つの大切なことを書き留めておきたいと思います。
連携を取ること
まず、もっと福祉も医療も学校も親も、そして児相などのあらゆる機関が連携できるのなら足並み揃え連携を取りたい。
そうでないと、親としては幾度も各所に同じ相談をし続け疲弊する。足並みもなかなか揃わないから一歩進むたびに躓く。
その根本に、全てが紙と鉛筆と口頭での連絡だから歪みが生じるのでは…とも思ってる。時代に見合ってないんだよね。
Slackでもチャットワークでも今はあらゆるプラットフォームが出そろってるわけだからさ…
「個人情報が…」とか、いってる場合ではない。
「○○ちゃんチャンネル」みたいなの作って「トラブル」「今日の報告」「支援変更点」なんか作って、当事者に関わる人がいつでもどこでも見れる環境も整えていけばいいのに…とも思う。薬も変更の度に10種類ぐらいの訳の分からない横文字を紙に書いて手渡して…本当、負担でしかないですよ。
自閉症当事者の気持ちや暮らしに配慮すること
あとは、当事者の気持ちや暮らしにもっと配慮してほしい。その暮らしの中には「家族」も入ってる。
自閉症の子を救う制度はあるんだけど、その家族に対する制度はないから、ひたすら家族に負担がかかり続ける。
一時的に関わればいい支援者と違って、24時間365日ずっと育児運営中の家族は倒れそうですよ。そこももう少しは考慮して制度が整ってほしいな。
母親も自分のメンタルを維持するために努めること
あと、「母親」という立場の私がこれを主張すると、違和感を感じる人も多いでしょうが…。
お母さん方は自分のメンタルを維持するために、最大限の努力をすべき。
障害児の母親が歯を食いしばって耐え続ける姿は、話としては美しいかもしれないけれど、普通じゃない。私たちにも人権と限界があります。
だって、自閉症児の育児は本当大変。
母親全てが、聖母マリアさまのような愛で溢れているわけではないんですよね。
それにね…
自閉症の問題行動は「理由がある」ってのは山ほど聞いたし、理解してる。でも、その理由がみつけれないことも多いんだよね。
それに対して「長い目で見ましょう」って余裕でいえる人は、限られた時間の関わりの場合がほとんど。四六時中この先もずっと受け止め続けなければならない家族は、「長い目」の目安が知りたいし、受け止め続けてたら心が崩壊します。
心って一度壊れたら、もう元には戻らないかもしれないんだよ。
母親も自閉症の子と同じで、先が見えないって物凄く不安なんだよ。次にどんな問題が起こるのか、どんな課題が降り注いでくるのか、寝てるときにどの角度から自分への攻撃がくるのかっていう暮らしは不安でしかない。
自閉症もその親もこんな暮らしが続くのは御免です!「不安」って体に良くないと、少しは伝わったかな。
まとめ:自閉症の子の母子分離で大切なこと3つ
今回は、母子分離について長かったこの半年をまとめてみました。
本当に苦しかったし、今も色々あって「家族」であることが苦しい。
でも、ひとつ良かったのは娘の入所先が近くになってよかったな。
今日は、ここまで。